EV(電気自動車)の現実と夢


2022.02.06


 先日、トヨタ自動車がバッテリーEV戦略の説明会を行った。
 おそらく、馬鹿なマスコミが日本は欧州のEV化に比べて周回遅れなのではないか、等と言うことを頻繁に言い続けているものだからなのだろう。そして自民党の若手の有力議員たちも、これからはEVの時代だ、等というものだからだろう。
 しかし、EVというのは問題だらけの自動車なのだ。今はまだたいして普及していないので、大きな問題になっていないが、これが馬鹿マスコミの言うように殆どの自動車がEVとなったらとんでもないことが起きる。もちろん殆どの自動車がEV化するなんて、遙かな未来にはどうなるかは知らないが、我々今成人しているものが生きている間には絶対にあり得ないことだ。
 EVが自動車の殆どのシェアを取るなどと言うことは幻想なのであって、近未来の現実にはあり得ない。
 でも、欧米の政治家たちがみんな言っているじゃないか、彼らはみんな2030年代にはエンジン車の販売を止めさせると。
 しかしながら、こうした政治家たちの殆どは2030年代には引退しているか、死んでいる。そして自分たちが言っていたことが覆ることを見ることになることは確実なのだ。


 EVが抱えている問題はありすぎて、始末に困るほどだ。
 まず、第一にEVは急速充電器でも充電に30分から1時間ほどもかかることは誰もが知っていることのはず。今は、EVが1%程しか普及していないのでさほどの問題になっていないが、これが数十パーセントもの普及率になれば、おそろしいことになる。ガソリンスタンドを思い浮かべてみればわかるが、ガソリンの場合には数分で充填が終わるのにEVは30分から1時間も充電が終わるのにかかるのだ。EVが普及して充電スタンドがいっぱいになってしまえば、たちまちにして充電器の近くには自動車の大行列ができるだろう。さらに、ここにトラックが来たらどうなるか。大型の長距離トラックは、300リッターもの燃料を入れるのだ。乗用車の6倍もの燃料を入れることになるのだが、これがEVとなったら3時間も充電スタンドを占拠することになる。
 マスコミに登場してえらそうに言う者の中には、5分で充電できるようになるなどと簡単に言う軽薄な輩もいるが、5分で大電流を電池に注ぎ込むには1000キロワットほどの恐ろしく強力な急速充電器が必要になる。EVというのは家庭で使う電力の数日分をバッテリーに蓄えているわけで、それだけの大きな電力をたった5分で入れるとなると、高圧大電流が必要となり、変電所から高圧の電力線を引いてこなければならなくなるし、小型の変電設備も必要になるが、そのようなものを町の至る所に設置するとなったら、電力網そのものを変えなければならなくなるだろう。もちろん簡単に5分で充電を、等と言っている輩にはそんなことが頭にあるはずも無い。さらに言うと、バッテリーというのはガソリンタンクのようなものとは根本的に異なるものだ。愚か者は、まるでガソリンを注ぎ込むのと同じに考えているようなのだが、バッテリーに充電するということは化学変化というものによって電気を蓄えているのだという子供でも知っていることを理解できていないとしか思えない。
 さらに、30分での急速充電でさえもバッテリーの寿命を縮めると言われているのに、高電圧で一気に短時間で充電をすれば当然化学変化を行っているバッテリーに大きなダメージを与えることになるが、そんなことすらも理解するだけの頭が無いのだろう。
 馬鹿なマスコミに登場してくる知ったかぶりの愚か者は、EVが普及してきたらどんどん充電スタンドを作れば良いなどと言っているが、今年の日本での充電スタンドの設置数は減っているのだ。なぜ、減っているかというと、ずいぶん昔に国からの補助金で作られた充電スタンドが老朽化し、古すぎて修理もままならないと言うことから撤去が進んでいるからなのだ。それなら、新しいのを設置すればと思うだろうが、撤去した役所の人の話では、新たに急速充電の設備を整えると、10億円ほどもかかると言っていた。こんな高価格なものを国からの補助金なしで何十台も設置しろと言われても無理だ、と言うことなのだ。
 ま、急速充電の設備と言っても全てが同じ価格と言うことでもないだろうが、だからといって普及したとしても1億円とかそれ以下と言うことは考えにくい。ただし、この充電器というのは今現在普及しているもので、充電に30分から1時間ほどもかかるというものだ。これを5分で充電できるような急速充電の設備となったら10億や20億円ではとうてい無理だろう。こんな高価な物を全国に設置して行くには大変なお金がかかるし、全国に設置し終えたと思ったら、最初の頃に設置したものは老朽化して買い換えないといけないと言うことになってくる。この巨額のお金をいったい誰が負担するのか。
 愚か者は、ヨーロッパの道沿いにはたくさんの充電器が設置されているではないか、と言うかも知れないが、ヨーロッパに住んでいる人の話では、道路にたくさん設置している充電器はほんとうに困ったときに家にたどり着くまでの分を充電するために使うもので、あまり実用性は無いと言う。この人の話では150KW以上の充電器であれば30分から1時間くらいで80%程にまで充電できるのだが、道路にたくさん設置している充電器は22KWなので1時間充電しても10%程しか充電できないということのようなのだ。
 テレビに出てくる愚か者は知らないだろうが、日本で使われている急速充電規格「CHAdeMO 1.0」は50kW、「同1.2」は200kWであり、1.0はヨーロッパの22KWの倍でしか無い。日本でもヨーロッパと同じで50KWのものが最も普及しているが、ヨーロッパの2倍と言うことは1時間充電してもバッテリーの20%位しか充電できないと言うことなのだ。200KWならば30分から1時間くらいで80%の充電ができるのだろうが、そうしたものはとても数が少ないはずだが、マスコミは全ての充電器が200KWであるかのような言い方をしている。
 これだけではない。150KW以上の急速充電の設備を普及したEVに対応するためにたくさん設置するとなったら、大電力が必要になるので、そのための高圧の受電設備も設けなければ無くなる。これは10億や20億円などと言うような金額では無く、数十億円以上かかることは確実だ。この巨額な費用を誰が負担するというのだろうか。さらに、高圧大電流を受電設備まで電力を配電するための送電網も必要になる。これは数百億円から数千億円もかかることになる。
 マスコミに登場してくる愚か者は、このようなことが頭に無いのでマンションなどにもどんどん充電器を等と言っているが、なんて馬鹿なんだとしか言いようがない。
 今は殆どEVが普及していないので、自治体や自動車関連の企業などがサービスのような形で充電器のコストを負担してくれているので安く見えるが、EVが今の10倍を超えると言っても全体から見たらわずかだが、そうしたことになれば充電のためのコストを受益者が負担してくれと言うことになるのは確実で、そうなったらEVは自動車本体だけでは無く電費も安くない、と言うことがはっきりしてくるのは目に見えている。
 ドイツに住んでいる人の話では、「1カ月のEV生活のデータをまとめると、総走行距離は1868キロメートル、充電料金は総額149ユーロ(約1万9千円)で、1キロワット時当たりの料金は60〜110円だった。」
 この料金は恐ろしく高いと言うことが、並の頭を持った人ならわかるはず。通常の家庭で使っている電気は、日本の場合では1KWあたり20〜30円程だからで、もちろん充電設備の巨額な設置費用を考えたら、このくらいの料金にしないと採算が合わないからなのだろう。しかも、「最も困ったのが、150キロワット以上のストレスの少ない速度の急速充電は高速道路沿いに限られていたことだ。街中はほとんどが22キロワットで、充電するだけのためには使いにくい。」
 ドイツのように、EV化では先端を走っていると言われている国でも充電器の状態はこの程度なのだ。どうしてかはあまりにも明白だ。150KW以上の急速充電の設備には莫大な費用がかかるのと、送電経路の問題があるからなのだ。
 さらに強力な300KWを超えるような充電器を使えばもっと快適になるかも知れないが、そうした充電器を設置するには当然コストがかかるので充電の際には高い料金を支払わなければならなくなることは、よほどの馬鹿以外は想像がつくはず。 
 まぁ、日本や欧米ではなんとかできたとしても、東南アジア諸国やアフリカでは、国の隅々にまで150KW以上の高価な急速充電器を設置するなんて不可能に決まっている。無理強いをしたら、そんな巨額なお金がどこからでてくるのかと言われるだろう。さらに、発電機の問題もある。途上国では殆どが石炭火力といった化石燃料で発電しているからだ。
 そもそも東南アジア諸国やアフリカで電気自動車を買える人なんて、ほんの一握りの筈。それこそ中古のガソリン車を買うのがやっとという人たちが圧倒的多数なのに、電気自動車でなければだめなどと政府がいったら、暴動が発生するだろう。

 さらに問題なのは寒冷地だ。ガソリンやディーゼルの自動車は、暖房にエンジンから発生した熱をそのまま使用している。これは航空機も同じだ。しかしEVでは、暖房もEVの電池に頼っているので、冬の電費はとても悪くなる。しかも電池は寒くても暑くても性能が下がるので、使用環境によってはバッテリーの性能、つまり走行距離に大変な影響が出ることになる。秋には問題なく走ることができた山道を、冬の山の中でバッテリーが無くなったらどうするのか。これは命に関わる問題だ。EVは50Kwほどの電力をバッテリーにため込んでいるのだが、50リッターのガソリン車の場合は電力に換算すると、500Kwものエネルギーを積んでいることになる。この差は、あまりにも大きい。もちろん、ガソリン車のガソリンの全てがエネルギーに変わるわけでは無い。効率が3分の2程だとしても、その差は桁違いだ。
 トヨタの「ランドクルーザー」は、「信頼性」「耐久性」「悪路走破性」という3つの卓越した性能を磨き上げたクルマだとされている。「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」クルマという「ランドクルーザー」の使命を全うするため、全方位でバージョンアップが図られているのだが、もし、これをEVにしたら、ランドクルーザーの特徴である「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」クルマとは言えなくなってしまうだろう。
 中東の砂漠やアフリカの人家も何も無い悪路、1日走っても何も無いままの状態が続くと言ったところをEV車で走れるか、となったら、大きな疑問を抱かざるを得ない。
 バッテリーというものは、化学変化によって起電力を得ているものなので、暑さにも寒さにも弱いものだし、ガソリン車やディーゼル車のように簡単に燃料を補充できないものだからだ。
 ランドクルーザーの安心を支えているのが、耐久性の高いディーゼルエンジンなのだ。

 さらに、リチウムというバッテリーの主原料の価格が、2020年後半の約9倍になっている。まだ、日本では1%弱。最も普及しているヨーロッパでも10%弱。中国を馬鹿なマスコミは盛んに取り上げているが、それでもEVは2020年の時点で4.4%しか普及していないのにだ。
 この程度のEVの普及率で、コバルトやリチウムといった原材料価格が暴騰している。
 コバルトは、起電力が下がると言うことを我慢すれば使用量を抑えることが可能だが、リチウムは使用量を抑えることなどできない。
 原材料価格が上がっているのは、リチウムの採れる国が極めて偏っているからで、南米のチリ、アルゼンチン、アジアでは中国、それにオーストラリアで殆どという状態だからだ。
 現在の産出量はオーストラリアがダントツだが、南米が最も多くの埋蔵量があるとされている。
 この僅かな産出国に世界の自動車メーカーが殺到したら、価格はさらに際限なく上がっていくことだろう。普通の工業製品は、たくさん生産することによって価格は下がってくるものなのだが、EVに関してはリチウムなどのレアメタルを大量に使っているために、その高騰という軛によって、EV車の価格が上がることはあっても下がることは期待できないのだ。
 とにかく、現在産出しているリチウムの全てをEVに振り向けたとしても、200万台しかまかなえない。世界で年間販売されている自動車の数は、おおよそ1億台だというのにだ。2030年にエンジン車の生産を止めるなどと言うことがいかに荒唐無稽な話しかが、このことでもわかるはず。
 もちろん、リチウムを始めとしたレアメタルを全く使わないでリチウムイオン電池に勝る電力を蓄えることができるという画期的なバッテリーが開発され、商品化されれば別だが、それは遙かな遠い未来の話しだ。

 バッテリーに関連して、価格が暴騰しているものは他にもある。六フッ化リン酸リチウムだ。これはLIBの電解液を構成する主要な電解質なのだが、この価格が2021年の初頭では約1700円/kg程であったのに、現在では供給が逼迫して約1万円/kg前後に暴騰している。
 EVが今以上に普及すれば、この価格は際限なく上がり続けることだろう。


 さらに大きな問題は、LIBの廃棄問題だ。
 2030年には、年間で150万トンから600万トンものLIBのセルが廃棄されると予測されている。
 しかも、LIBの廃棄自体が簡単では無い。電気が残った状態のものを放電させないまま破砕すると、電池が短絡して火災になる危険性が高まる。そのうえに焼却もできない。LIBの電解液に含まれる六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が熱分解して強い毒性がある五フッ化リン(PF5)が発生するからだ。しかも、五フッ化リンは水とも激しく反応してきわめて有害なフッ化水素ガスも生じさせる。
 EVの普及の開始が早かった中国では、すでに役目を終えたLIBが年間10万トンを超えてきていて、大量の使われなくなった電気自動車が至る所で放置されたりして社会的な大問題になりつつあるのだ。
 今はまだ廃棄の量が10万トン単位なのでそれほど目立った状況には無いが、これが100万トン単位になってきたら大変なことになるだろう。もちろん、廃棄された物を処理工場できちんと処理すれば良いのだが、それにはお金がかかるので当然処理費用がかかることになる。そうなると、今でも家電などを川や空き地に捨てる馬鹿者がいるわけで、数百万トンの寿命の来たLIBが毎年でてくると言うことになったら、悪質な業者が山の中や川などに大量に捨てるといったとんでもないことが起きる可能性が極めて高いことが予想される。
 EU域内では、2040年に廃棄されたり、車輌の電池の入れ替えによって回収された電池の量は230万トンほどになるとしている。これはLIB全体の17%と見積もられているのだが、これだけの膨大な廃棄物の処理が問題も無く処理できるのか。プラスチックのように、アジアやアフリカの途上国に有用な物として輸出されることになるのは目に見えている。
 実際に、中国では使われなくなったEV車が大量に放置されていると言った形で、その傾向がはっきりと形になって現れ始めているのだ。
 しかも、LIBの廃棄物処理では銅やコバルトと言った金属類の回収が行われるだけで、リチウムは回収されない。
 一般的な乾式精錬では材料の溶融時に珪石や石英を溶媒として添加するために、スラグに多量のシリカが含まれてしまい、リチウムの含有量が非常に少なくなってしまう上にシリコンの比率が高いとV焼して結晶のタイプを変換しない限り、酸でリチウムを溶かしだすことができないためだ。


 さらにさらに、リチウムイオン電池と言うものは、発火の問題を抱えている。事故などの際に、ガソリン車なら壊れたところを修理するだけで済むが、EV車はいったん事故によってバッテリーが発火し始めると、消すことは殆ど不可能に近い。数個のセルが壊れたことで発火が始まると、次から次にと発火が連鎖していく為なのだ。結局車体が完全に燃え尽きるまで火は消えない。その間消防車は水をかけ続けることになるので、とんでもない量の水をかけることになってしまう。
 アメリカのテキサス州でテスラ車が木にぶつかった事故では、午後9時半に消防隊が到着して消火に当たったが、普通の自動車では数分で消し止めることができるのに、この事故の場合は火が消えたのは0時15分だった。水だけでは消えないと言うことから、10時15分に大型の粉末消火器を使って消火をしたが効果は無かった。今度は車体をクレーンでつり上げて、バッテリーのある車体の下部から水をかけてようやく消し止めることができた。結局、3時間近くも燃え続けたことになる。
 2018年3月23日にアメリカ、カリフォルニアの国道101号でテスラ車が中央分離帯に衝突して燃え上がった事故では、国道101号線の6車線が6時間も閉鎖された。
 ヨーロッパでは、EVが普及してきているために事故で自動車が燃えるということが珍しくなくなった。事故でEV車が発火を始めると、道路を封鎖して長時間大量の水をかけ続けるのはあまりにも大変だと言うことなのだろう。ヨーロッパでは、EV車用の消火設備を作った。これは巨大な箱に水をためておいて、EVが発火したという通報を受けると、駆けつけてEV車全体を水の入った箱にクレーン車でつり上げて入れてしまうのだ。
 これが一番簡単で確実な消火方法だと言うことから、この消火方法が普及し始めていると言うことなのだが、EVというのは電気の塊のようなものだ。それを水のたまった箱に浸けてしまったら、完璧に廃車だ。
 EVというのは、安くても400万円ほどもする。高いものは1千万円をはるかに超えるものも少なくない。そんな高額な自動車が、ちょっとした事故で発火したからといって水に浸けられて廃車になってしまったら、ショックは大きいだろう。そうした大きなショックを受けた直後に自動車は必要だと言うことになったとして、そのような経験をした人が、また新たにEV車を買いたいと思うだろうか。

 まだまだ、数え上げていったら切りが無いほどだが、最後に電磁鋼板の問題を指摘しておきたい。電磁鋼板はモーターの主原料で、この部材の善し悪しでモーターの性能が大幅に変わってしまう。EVにとっては極めて重要なものだが、作れる製鉄企業は限られているだけでは無く、その企業のあるところが限られている。
 ヨーロッパの無知な政治屋は、こうした極めて重要なことを知らないのだ。EVに必須なモーターを構成する電磁鋼板が無ければ、EVなんてタダの箱だ。その電磁鋼板を作れる企業があるのが中国と日本、それに韓国に限られていて、この3国で9割近くを占めている。欧米にも製鉄を行っている企業はいくらでもあるが、電磁鋼板を作れる企業はごくわずかしか存在しないのだ。
 電磁鋼板をモーターに使えるように加工する会社も極めて限られているし、規模が小さい会社ばかりなので急に生産量を増やせと言っても無理だ。
 調査会社の米S&P Global(S&Pグローバル)の自動車部門では、電磁鋼板の供給が、25年以降に不足する可能性を指摘し、同社の試算では、不足量が27年に35万t超、30年には90万t超に達する恐れがあるという。
 これに関連したこととしては、高性能のモーターに使われる永久磁石の問題がある。EVを駆動するモーターにはネオジム磁石という高性能の永久磁石が使われているのだが、このネオジム(Nd)が希少金属なのだ。しかも、その殆どが中国で産出されている。このネオジムを使わないでネオジム磁石に匹敵する高性能の永久磁石を作れないかと言うことで、世界中で研究がなされているが容易ではない。

 こうした状況があるのに、わずか10年やそこいらで欧米ではエンジン車を止めてEV以外の自動車の販売を禁止にするなどということを現実に行ったら、今の半導体不足で納車が半年遅れなどと言うものとは桁違いの状況が生まれることは確実だ。
 自動車を買いたいと言って販売店を訪れても、納期はいつになるかは言えないという返答が帰ってくることになる。そうなったら、新車がだめというのなら中古のハイブリット車をアジアから輸入するという業者が現れることは確実だ。
 要するに、無知な政治屋が何も知らないで夢を語ってはいるのだが、現実には技術や材料などが対応できないので、実現するはずが無い。
 もちろん、遙かな未来にはEVやFCVが殆どという時代が実現するかも知れないが、我々が生きている近未来には無理だと言うことなのだ。全固体電池はずいぶん前から完成間近と言われながら、製品化の予測はどんどん先に伸びて行ってしまっている。この理由は電池の充放電を繰り返すと負極活物質などが膨張収縮を繰り返すことで、固体電解質との間に隙間ができてしまうことにある。隙間ができれば、そこに大きな抵抗ができることになり、電池としての性能は急激に落ちるからだ。さらに、ポリマー電池なども超えがたい問題を抱えたままだからなのだ。

 トヨタの社長が言っていたことだが、問題なのは炭素なのであってエンジンではない。確かにその通りで、エンジンを水素で動かすと言うことであれば脱炭素に沿うことになる。しかも、エンジン車の製造の方がEVを作るよりはるかに安くできることは、今現在そうした自動車がたくさん世界中で走っているのだから証明済みだ。エンジン車なら100万円台で作れるし、そうしたクルマを買って乗っている人は世界中にいくらでもいる。そうした100万円台なら買えるが、300万円以上は無理だという人は、今100万円台のクルマに乗っている人の殆どがそうだろう。そうした人はこれからもEVではなく、水素燃料で走る低価格のエンジン車を選ぶに相違ない。また、EVだけではなくFCVも普及するはずなので、FCVは水素で動く乗り物なのだから水素スタンドも増え続けるはずで、そうしたところで水素で動くエンジン車を持っている人は、燃料を補給すれば良いのだからエンジン車がなくなるとか、買う者がいないなどと戯けたことを言っている者がいるが、そんなことがあり得るはずが無いのだ。特に、寒冷地ではバッテリーの弱点を考えたらエンジン車は数十年単位では無くならないだろう。言うまでも無いことだが、エンジン車なら寒い土地でも何も気にせずに真冬の長距離走行の際に暖房を付けることができるが、EV車では暖房は控えめにして寒さに震えながら乗っていなければならない。しかも、EV車の方がはるかに価格が高いのだ。

 ホンダは近いうちにEVに全面移行すると言うことのようなのだが、軽自動車は捨てると言うことなのだろうか。軽自動車をEVにし、今と大差ない価格で売るのは無理の筈。
 個人的には、2050年くらいまでは、EVは高級車の象徴のような形で存続するのではないかと思っている。

 最後に強調しておきたいのは、LIB以外の電池が開発されたとしても、現状ではその材料の殆どがリチウム、ニッケル、コバルトと言ったレアメタルが主成分なのだ。レアメタルを日本語で表記すると希少金属となるが、希少で採掘量が極めて少ない金属。こうしたレアメタルを大量に使わなければならない自動車が世界の殆どのシェアを確保するなどと言うことは、夢の世界と現実との区別のつかない人でないと、現実的とは思わないだろう。
 レアメタルを大量に使わないで、LIBをはるかに超えるような能力を持った電池が開発されるのはいつのことなのか。早くても今の若者が老人になる頃、今世紀の後半なのでは無いだろうか。もしかしたら、永久にそのような電池は出てこない可能性もある。
 数十年後には、EVよりもFCVが大きく発展することで、EVは忘れられる可能性もあるからと、エンジン車が燃料を水素に変えて走り続ける可能性が高いからだ。
 自動車が最初に登場した頃にはEVが注目を集めたのだが、エンジン車が普及するとEVは忘れられていった。歴史は繰り返すと言うが、今回もEVに同じ運命が訪れる可能性は否定できない。

 EVの問題点とは直接関係が無いが、そもそもなんのためにEVという課題の多い自動車を増やし、将来的にはエンジン車と置き換えようとするのかと言えば、EVはクリーンだからと言うことがあるからだろう。EVは二酸化炭素を出さないと言うのがEVの普及を声高に叫んでいる人たちの共通の意識であり、考えだからだ。所が、日本でEV車が1kW当たり何グラムの二酸化炭素を出すのかを見てみると、日本はインド、中国に続いてワースト3位。中国と日本、米国ではハイブリッド車の方がEVよりも二酸化炭素が少ないという結果になっている。要するに、EVはバッテリーを製造するときに大量の二酸化炭素を出す上に、日本では石炭火力や天然ガスによって発電された電力が殆どなので、日本でEV車をたくさん走らせてもクリーンとはならないのだ。
 愚かなマスコミは、中国はEVの普及がすごいと言うが、そのEV車を動かしている電気は何によって発電されたのを考えていない。
 中国は太陽光発電が日本とは桁違いに多いのだが、日本よりも効率の良くない石炭火力も桁違いに多いのだ。

 経済産業省は二酸化炭素を減らすために、2030年には今よりも総電力量を10%減らすと言っているのだが、電力量を減らしながら自動車は全てEVにするというのだ。
 菅が総理の時に、2035年にエンジン車の製造販売を止めると明言しているのだが、多分自民党内では総裁が決めたことなので実行するつもりで居るのだろう。しかし、経済産業省が電力の発電量を2030年に10%も減らすと言っている。役人も政治屋たちもEVというのは一般家庭の数日分の電力を蓄えていて、それを1日もしないうちに使いきってしまうものなのだと言うことを理解していないらしい。
 もし、本気でエンジン車の製造を止めてEVに切り替えると思っているのなら、今から大車輪で日本中至る所で風力発電の設置計画をしなければ間に合わないのだが、自民党も電力業界にもそんな気配はどこにも感じられない。
 発電量を減らしておきながら、自動車を全て電気で走る物に変えるなどと言うことは論理的に成り立たないのだが、政治家も役人たちもみんなこうした極めて重大なことを理解する頭が無いと言っているのと同じだ。
 日本だけで考えても、今走っている自動車を全てEVにしたとした場合、専門家の試算では年間の電力総使用量は50億kWhも増加することになる。これは、1MW級の風力発電(設備利用率が25%、年間発電量が219万kWh)の風車が2280基も必要な量になるのだが、これほどの巨大な電力をどうやって工面するつもりなのだろうか。
 こうしたことは日本だけの問題では無い。欧米各国全てに言えることなのだが、こうした基本的な大問題については、世界の政治屋たちは気にもしていないようなのだ。

 愚かな世界各国の政治屋たちがエンジン車を止めると言っている2030年になったときに、充電ステーションも2次電池も画期的なものが出来上がったとして、価格はハイブリッド車並みになっていると思っているのだろうか。私は、それはあり得ないと思っている。理由は上記で述べた。EVが今のような高価格のまま2030年になり、補助金はなく(日本のEV購入の補助金は2025年に、中国では2026年に終了予定)、優遇措置もない。EVが普及すればするほど優遇措置の恩恵を受ける可能性は低くなるが、そうした状況で、果たして自動車を求める人たちはEVを選択すると思うだろうか。もちろん、お金がいくらでもあるという富裕層は買うだろうが、一般人がハイブリッドでは無くEVを選択する可能性は極めて低いと思われる。補助金があって、最も低価格なものでさえ400万円もする自動車なのだ。補助金が無くなったら、500万円を超えることになることだろうが、こんな高額な自動車を好んで買いたいと思うのは、極めて限られた人に決まっているからだ。
 走行距離の短い軽自動車なら、200万円前後で買えるかも知れないが、充電スタンドのあるところを絶えず気にしながら走らなければならないようなクルマを、あえてほしいと思う人は極めて限られているはず。日本で初めて発売されたi-MiEVは、160Kmの走行距離だったが極めて売れ行きが悪かった。160Kmと言ったところで、実際に走れる距離は100Km位しか走れなかったのと、登録者よりも価格が高いのでは買う気にはなれなかったものと思われる。
 充電スタンドを気にせずに走れるのには、500Km以上を走れるということでないとだめなのだが、こうしたクルマでも冷房や暖房を入れたら一気に走行距離は縮む。だから、安心して乗っていられるのには最低でも500Km以上の走行距離は必要なのだが、そうしたEVは500万円以上はしてしまうのだ。








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