西之島




2021.5.16.


 西之島だが、最近マスコミでは殆ど取り上げられなくなった。所が、この島は驚くほどの激変を遂げている。
 最初は西之島の横から小さな噴火が始まったのだが、この噴火がどんどん大きくなり、ついには旧西之島を飲み込んで巨大化し、それが今も続いているのだ。
 数年前の大噴火の時には、いかにも溶岩が噴出した島という感じで、流れ出た溶岩が固まった状態そのままの景観を示していて、特に夜の光景は壮観だった。
 夜になると、溶岩が島全体を覆っている様子が赤いまだら模様となって映し出され、島全体が溶岩の動きで巨大な生き物のようにうごめいていた。山頂から流れてくる溶岩の川が、うねり下っている様子が夜になるとハッキリとわかる。そして、所々に溶岩の塊が大きな赤い池のようになっているのも見えた。噴火口のある山上からはひっきりなしに真っ赤に焼けた溶岩が噴水のように吹き上がっていて、吹き上がった溶岩が花火のように赤い点となって周囲に飛び散っている。まさに、幻想的で壮観としか言いようがなかったのだが、これがほんとうに地球上で起こっていることなのか、と思わせるほどに夢幻的で、現実離れをしていたものだった。
 普通の火山の噴火だと、だいたい一方向に溶岩が流れていて、それが赤い川のようになっていると言う光景が現れるものなのだが、西之島の場合は溶岩の流れが一方向では無く、島全体にまんべんなく流れ続けている。だからこそ、噴火口を中心にして丸い円を描くような形で島が出来ているのだろうが、見たことも無い光景である事も確かなことだ。
 昼間の海岸に上陸をすると、浅間山の鬼押し園のように辺り一帯がごつごつした溶岩に覆われていて、歩くのも容易ではないという感じだった。その中に旧西之島の一部がほんの僅かだが残っていて、そこには水鳥たちが巣を作り子育てをしていたのだ。
 所が、最近になると島の状況は一変してしまい、上空から見た映像ではまるで西之島では無いかのような光景になってしまっている。ただ、何気なく島の形を見ると、まるで西之島が数年前の5分の1くらいに縮小してしまったかのように見えるのだが、実際には西之島の体積は数年前の6倍ほどになっているのだという。なぜ、小さく見えるかというと、嘗て噴火していた山が恐ろしいほどに巨大化し、しかも、火山の上の部分が吹き飛んでしまい、以前島だった所が全て巨大な噴火口になってしまっていた。その巨大な噴火口からは、今は水蒸気と思われる白い噴煙が立ち上っている。
 島全体が大きくなって少し前には海だった所に火山の麓が大きく広がっていて、しかも、大きく広がった火山の麓の部分は火山灰に覆われてしまっていた。このために巨大な噴火口を除くと、島全体が真っ黒な砂漠のような奇妙な形をしていて、以前の西之島を知っている人が今の西之島を見ても、同じ島とは到底思えないような状況になっているのだ。
 島の大きさと形状の変化に関しては、今の島の形に以前の島の形をCGで重ね合わせることで、いかに島全体の形状が大きくなったのかがわかった。
 あのごつごつした溶岩の塊に覆われていた所は全て噴火口と化してしまったことで、以前水鳥が営巣をしていた所も完全に溶岩と火山灰に埋め尽くされたばかりでは無い、島の殆どは100度を超える高温になっているのでとても動物が住めるような状態では無くなっていた。
 このことで、旧西之島にいた生物たちは全てがいったんリセットされてしまい、完全な不毛の地となったようだ。
 これではとてもではないが生き物が住めるような状況では無いと思われたのだが、よく見ると白い模様のような物が真っ黒な火山灰の上に点々とついている。近づいてみると、アオツラカツオドリがたくさんいて、卵を抱いているものもいた。どうやら、火山灰が厚く溜まっていて、溶岩からの熱が余り表面に届かなくなっている所を見つけて、そこで営巣を始めたらしい。アオツラカツオドリばかりが44羽もいて、その周辺にはたくさんの糞がまき散らされて真っ黒な火山灰の上に白い模様ができていた。
 完全に生物が存在しない状態の孤島というのは、人類が見たこともないことから、何も無い島にどのようにして動植物がそこに土着し、繁栄をしていくのかを直に見ることの出来る世界でも他に例のない島となったのだ。
 それにしても、全く、驚くべき変貌ぶりだが、これからこの島はどう変わっていくのか興味津々だ。











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