ベトナム人技能実習生の実態4




2021.04.08.


 ベトナムでは国策として労働力の輸出が行われている。
 ハノイにある実習生を送り出す機関の様子が映し出されている。
 その数は公認されているだけでおよそ400社、非公認のものはそれよりも遙かに多いとされている。
 主な役割は実習生の希望者を教育し、日本の管理団体につなぐこと。

 送り出し機関で日本語を勉強している人に聞いた。
「日本でどんな仕事をしますか?」
「機械保全です。」
「私の仕事は、鋳造です。」
「総菜加工です。ザーサイと卵です。」
 研修を受けていた若者たちの多くが貧しい農村部の出身。日本に夢を抱いている。
 なぜ日本に行きたいのかの問いかけに、
「日本の人権意識や労働環境はすばらしいという印象があるからです。」
 ほとんど嫌みを言っているとしか思えないが、彼らは送り出し機関からこのように教えられているようだ。
 送り出し機関は、日本語などの教育と就職の斡旋をする民間企業。実習生たちは半年ほどこの送り出し機関で日本語などの研修を受ける。そして日本での採用が決まったら送り出し機関に多額の手数料を支払って来日して働く。
 ベトナムから日本に実習生として働くものは、年間10万人以上。推計で800億円以上ものお金が動く巨大ビジネスとなっている。
 その源泉は、実習生の多くが借金をしてまで支払う学費や手数料。実情を明かさない企業が多い中ある送り出し機関が取材に応じてくれた。
送り出し機関 グエン・ソワン・フン社長
「ベトナムの法律では3年間の派遣で3600ドル(およそ40万円)しか徴収できないというルールがあります。弊社は3600ドルしか受け取っていませんが、ほとんどの(送り出し機関が)情報では3600ドル以上は取っていると思います。
「そういうところが多い?」
「まあ、ほとんどかと思いますね。」
 さらに、法定外の金額を取っているという送り出し機関にも匿名で話を聞くことができた。
「法律通りに3600ドルでやっている送り出し機関は2・3社だけ。ほとんどの会社が80万円から100万円くらい徴収しています。法律以上の手数料を取った送り出し機関が罰せられたことはありません。」
 NHKが取材してきた実習生も多額の借金をしていた。

 技能実習生のティエンさんの実家を訪ねた。
 両親はどんな思いで娘を送り出したのか。
「大金を稼いで家族を貧乏から抜け出させるから(日本へ)行かせてください」と言われたの。75万円ほど借金したけれど、私たち農民にとってはすごい金額ですよ。」
 父親の仕事は大工。それに加えて落花生を栽培して生計を立てている。年収はおよそ20万円。決して豊かとはいえない暮らしだ。
 娘が実習生になれば高度な技術を身につけてお金を稼いでくれると信じていた。
 この日ハノイにある送り出し機関から電話がかかってきた。
「契約の精算?いったいどうやるんですか?」
「送り出し機関からの電話です。来週の土曜日に契約の精算をするって呼び出されたわ。契約の精算ってどういうことになるのかわからないわ。こんな電話が来るなんて本当に心配です。」
 戸惑った両親は娘に電話をした。
「ちゃんと給料が支払われていないし、契約とすべてが違うって言ってくれた?」
「言ったよ、何でこんなに給料が低くて残業代もろくに出ないんだって、」
 両親は、送り出し機関から違約金を請求されるのではないかと心配していたのだ。
ティエンさんの話
「私たちが失踪したので、会社に謝って戻るように言われたそうです。詳しい事情を知らない両親は心配になっています。」
 借金をして支払った金額は年収の4倍近く、返済のめども立たず両親は途方に暮れていた。
神戸大学 斉藤善久教授の話し
(送り出し機関は)違約金を取ろうとしているか、あるいはそれを本当に取らないにしても脅しに使って、一切今後文句を言うなと言うことは約束させると思う。(ティエンさんたちは)会社とも組合とも話がついていて、平和的に会社を離れましたよね。だから、それは失踪ではない。会社の秘密を暴露して外部(支援者)と連携して契約期間中に会社を離れたことは許されないと(送り出し機関は)思っていると思う。」

 日本への派遣の手数料は、3600ドル以上は請求してはならないということになっていても実態は全く違う。とにかく、違反しても罰せられないのでは限度額を決めた意味が無い。このために殆どの送り出し機関は100万円というベトナム人にとっては、とんでもない高額の手数料を取っている。
 これだけのベトナム人にとってはとんでもない金額が得られる上に、日本に行ってお金儲けをしたいというベトナム人はいくらでもいる。送り出し機関にとっては、日本での受け入れ機関である管理団体が受け入れると言ってくれれば、ベトナム人にとっては夢のような莫大な金額が入ってくることになる。5人受け入れると言うだけで500万円。10人受けいれるとなったら1000万円もの巨額なお金が転がり込んでくるのだ。ベトナムでは、お金の価値としては少なく見積もっても金額の5倍以上の価値はあるだろう。
 送り出し機関の側から見たら、日本の管理団体はまさにお金の生る木に映っているはず。当然のことながら、管理団体の機嫌を損ねるようなことは絶対にしてはいけないのだ。
 ベトナムには送り出し機関が山ほどある。当然のことながら、なんとかして我が社に目を向けて貰いたいとなる。こうなると相互の利害関係が圧倒的に日本側に有利になるのだ。この結果として日本の管理団体からは、様々な要求をベトナム側にし出すのは当然とさえ言える。
 まさに、こうした実習生の制度を作った者が考えもしなかったとんでもない利権が生まれていて、今回はその一端がティエンさんの両親にのしかかってきていると言うことなのだ。









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