半導体の不足問題




2021.1.20.

 年が明けると、半導体の不足で自動車の生産が予定通りに出来ないとか減産という話しが頻繁にニュースに登場するようになってきた。
 新型コロナウィルスの影響で、昨年の春以降自動車業界は需要の急激な落ち込みで大幅な生産調整を余儀なくされていたが、昨年末ぐらいから需要が戻ってきてトヨタのようにV字回復を表明する企業も出てきた。
 所が、年が明けたとたんにどこのメーカーも半導体不足で予定通りの操業が出来ないのだという。
 この話で奇妙なのは、半導体の不足問題では台湾のファンドリー企業が生産が追いつかないと言うことをしきりに言うのだが、そのくせに足りないのはマイコンや電源回路に使われるパワー半導体だというのだ。
 こうしたことを言いながら、半導体が足りないのは台湾のファウンドリーが原因だというのだが、なぜか日本の半導体メーカーの名前は全く出てこない。
 おそらく、こうした記事を書いているのは半導体の知識が何も無い者が半導体が足りないと言うことを小耳に挟んで、それで半導体の最先端を走っているのは台湾のファウンドリー企業なので、きっとそれが原因に違いないと思い込んで記事を書いているのだろう。
 その証拠とも言って良いのが、記事に中身が何も無いと言うことなのだ。ただ、半導体が足りないと言っているだけで、殆どの記事はどのような半導体が足りないのかすら書いていない。
 1つだけ珍しくマイコンやパワー半導体がと言うことを書いている記事があったが、この記事が唯一という有様だ。
 近年、日本の半導体メーカーは落ち目で、マスコミからダメだダメだの大合唱ばかりが続いてきて、叩かれ続けられていたのだが、多少なりとも半導体の知識のあるものであれば自動車用の半導体不足という話しは日本の半導体メーカーにとっては幸運が天から降ってきたような状況だということがわかるはずだ。
 なぜなら、マイコンもパワー半導体も日本の半導体メーカーのお家芸と言って良いくらいだからだ。
 当然のことながら、日本の半導体メーカーも世界需要の高まりを受けて工場の稼働率は上がっている。例えばルネサスは10%以上も稼働率が上がっているという状態だ。
 ルネサスは大震災の時に工場が止まり、世界の自動車メーカーが影響を受けたと言うことが大々的に取り上げられたわけで、ルネサスで作っている半導体の半分は自動車向けだとされている。それなのになぜか半導体の不足問題では、日本の半導体メーカーの名前は全く出てこないのだ。
 おそらく、マスコミとしてはさんざん日本のメーカーはダメだと言い続けてきた手前、ここで日本の半導体メーカーの生産が上がっているとは言いにくいのかも知れないが、くだらないとしか言いようがない。
 パソコンやスマホなどの需要が高まっているために、台湾のファウンドリーが大増産をしていることは確かで、生産が間に合わないと言うことも間違いのないことではあるが、自動車に使うような半導体は安全第一と言うことから最先端の半導体は使いたがらないという傾向があるのだ。
 このようなことは遙かな昔から言われ続けてきたことで、今に始まったことではない。それなのになぜか半導体不足となると、最先端の半導体しかマスコミはイメージできないようなのだ。
 要するに、自動車用の半導体不足というのは、ディジタル用の半導体ではなく、アナログ用の半導体が足りないという状態なのだ。
 ルネサスの工場では40nmまでで、それ以上の微細なプロセスで作るチップはファンドリー企業に委託しているようなのだが、そうした最先端の半導体は殆ど自動車には使っていないと言うことなのだ。
 日本のメーカーは自社で工場を持っているのでさほど騒ぐこともないのだが、自社工場を持っていないいわゆるファブレスの企業は、生産をしてくれる企業を探して血眼になっていると言う状態なのだが、こうしたことも日本のメーカーをマスコミは取り上げたくない大きな理由のひとつなのだろう。なにしろ、日本のメーカーはいつまでも自社工場を持っているから非効率でダメなのだ、と言い続けてきたのだから。
 日本の半導体メーカーの稼働率は、まだ80%前後で余裕がある。足りないからと言って、すぐに100%の稼働は出来ないだろうが、少しずつ様子を見ながら稼働率を上げていくことだろう。
 これまで長年にわたって自動車メーカーに値引きを強いられてきたのが、こうした状況ではとてもではないが値引きの強要はできないだろう。とうぶんの間、久しぶりに訪れた我が世の春を日本の半導体メーカーは享受できそうだ。

 ただ、自動車用の半導体の売上高は半導体市場全体の10%にも満たないことから、自動車用の半導体不足が半導体需要の逼迫の要因だとするのには無理がある。おそらく自動車用の半導体不足によって、半導体製造ラインの奪い合いが起きてしまい、さらには需要を上回る買い増しがあってのことだろう。









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