ベトナム人技能実習生の実態




2020.11.17.


 外国人技能実習制度に関する番組を見た。
 NHKのeテレビだったので、見た人はごく稀だろう。
 現在、ベトナム人実習生による犯罪が連日報道されているが、こうした状況を生んだ技能実習制度という大きな要因を無視して彼らの犯罪を糾弾するのは片手落ちというものだろう。
 日本政府による現代の奴隷制度が、外国人技能実習制度だと言われている。
 当初、法案が出された時から問題が多いとされてきた技能実習制度なのだが、今でも基本的な制度の欠陥については放置されたままの状態が続いている。
 これまでも外国人技能実習制度の問題点についてはいろいろとマスコミでも報道されていたが、今回NHKの番組ではもっと強烈な裏の世界の話が展開されていた。
 それこそ、関係者以外誰も知らない裏の事情が暴露されたといった印象だった。
 個人的に以前から大きな疑問だったのは、技能実習制度の下で日本に送り出される際に、手数料として送り出す側から実習生に対して100万円も取られると言うことだった。
 日本でも100万円というのは大きなお金だが、貧しい年収が20−30万円くらいしか無いベトナム人にとっては、とんでもない巨額のお金だ。とてもではないが、自腹で賄いきれるような金額では無い。
 借金で賄うしか無いのだが、日本で言えば、年収200−300万円しかない人が1000万円の借金をするようなもので、元々生きて行くだけで精一杯の収入しか無い人たちが、年収の5倍もの借金をしてまで日本に子供を行かせるのは、日本で働けば100万円くらい簡単に稼げると思っているからなのだろう。
 所が、日本に到着後、配属された業種によってはただ働き同然で、過酷な作業を強要するところが少なくないのだ。
 それにしてもベトナムから日本に送り出すについて、なぜこれほどの巨額の手数料が必要となるのか。
 もちろん、胡散臭いものは十分すぎるほどに感じてはいたが、この番組を見たことで、その胡散臭さの一端を見せて貰ったといった感じだった。

 日本で働く技能実習生は右肩上がりで増え続け、現在は41万人。農業、建築、等様々な産業で日本社会を支えている。
繊維業界の人の話
「技能実習生がいなくなったら即座に生産は止まって企業は成り立たなくなる企業が非常に多いと思います。」
 一方で、安価な労働力として、労働基準監督署などの指導では7割以上の事業所で法令違反が見つかると言ったことで、長年に渡って問題が指摘され続けてきた。
 参議院議員の有田芳生氏の国会での追及
「自殺や病死がずっと続いている。これが技能実習生の実態なんです。」
 神戸大学の斉藤善久氏の話
「外国人技能実習制度にしてもこのたびの特定技能にしても、要は若い労働者の使い捨てです。」
 不正が絶えない中で技能実習制度はなぜ拡大し続けているのか、国が掲げる理念と実態。その狭間で翻弄される技能実習生の姿と、制度の背景に迫る。

 ベトナム人達が川でウシガエルを捕まえているところから番組は始まった。
 番組担当者が何をしているのかと聞くと、
「コロナのせいで仕事がなくなって給料も減ったので、食べるために蛙を捕まえています」と応えた。
 縫製の仕事をする彼女の給料は、普段は15万円ほど。しかし新型コロナウィルスの影響で手取りは4万円ほどに減っていた。
「今の会社はコロナのせいで仕事がなくて家族へ送るお金もないんです。今コロナのせいで休みが長くありますが、家族の傍に戻れないので、家族が恋しくてたまらないです。日本に来たことを後悔しています。」
 NHKでは2年前からベトナム人技能実習生を取材してきた。彼女たちが働いていたのは下請けの縫製工場だった。
 この会社は行政処分を受けたのだが、洋服の縫製技術を学ぶという名目で日本に来ていたはずが、実態はタオルの縫製で早朝から深夜に渡る仕事を強要されていた。
 ベトナム人の実習生ヒエンさん
「1日15時間働かされて、仕事にも生活にも強いストレスを感じてつらかった。」
 今治にある縫製工場では5年間の技能実習生の受け入れを停止という行政処分を受けたのだが、NHKが取材を始めたきっかけは技能実習生の支援者を通じてだった。
 彼女たちはメールで訴えていたが、そこには
「こんばんわ、今もんだいがあります」「会社にこわいとです」「わたしたちかいしゃかわりたい」
 動画でも問題を訴えていて、その中では
「私達の生活は刑務所の中みたいです。叫びたい気持ちを抑えてただお互いに抱き合って泣いています。」
 詳しい話を聞かせて欲しいと言って、彼女たちにインタビューを申し込んだ。
 現れたのは20代の女性4人。
「何を作っているのですか?」
 技能実習生のティエンさん
「タオルを縫います。勤務時間が長く、ノルマが多くて怒られる上に正しい給料をもらえていません。毎日我慢をして働いて、借金を返すためだと自分に言い聞かせています。すごく失望していて悲しいです。家畜のように扱われて、1日中叱られています。」

 外国人技能実習制度の仕組みは、ベトナム側の送り出し機関に登録し、半年の研修を受け、手数料などが徴収されたあとに来日する。日本側の管理団体のもとで日本語などの講習を受ける。そして紹介を受けた会社で働くことになる。働ける職種は法律で定められ、認可された実習計画に基づいて作業をすることになっている。技能実習生は、原則として転職を認められていない。また、多くの人が手数料などを払うために借金をしているために途中で帰国することもままならない。
 転職が認められていないことと技能実習生たちが多額の借金をしているために、仕事を辞めて帰国することもままならないことを多くの悪徳企業の経営者たちは悪用し、ろくな給料も支払わずに過酷な長時間労働を強いるのだ。
 これが現代の奴隷制度と言われるゆえんなのだが、そして国会でもさんざん指摘されてきているのに、自民党も関係省庁の役人どもも素知らぬ顔を押し通している。

 NHKには、実習生から工場のようすが動画で次々と送られてきた。
「ノルマを達成できないと、朝方まで仕事をさせられます。」
「社長に叱られたときの音声があります。」
社長の声
「400枚縫って1時間でたたむ。7時半からだったら12時間にはたたみ終わる。全員がそのつもりでやったら夜の10時には絶対余裕で終わるの。言っている意味がわかりますか?」
 これだけの過重労働をこなして、月給は11万円ほどでしかない。
 この中から家賃と水道光熱費として3万円を天引きされる。
 狭い会社の寮の中に押し込められたような状況で、家賃と水道光熱費に一人3万円もかかるはずがない。悪徳企業の典型的な対応だ。
 工場内の寮の中の映像が出てきたが、
「狭い部屋に沢山のベトナム人が住んでいます。最低なのは長雨の時、生乾きの服を着て仕事をしていることです。服はいつもイヤな臭いがするけど着るしかありません。こんなのは憧れた日本の生活とは言えない。」

 最初の出会いから数日後、彼女たちから再びSOSが届いた。
 NHKの取材班は、支援者と一緒に待ち合わせ場所に向かった。
 神戸大学の斉藤善久准教授に向かって彼女たちはこう訴えた。
「私達を助けてください。ほんとうに怖いです。すごく怒られて怖い。社長が怖い。」
 そこへ彼女たちを探して社長がやってきた。社長の姿はぼかしが入っていて、青い服を着ているとしかわからない。
 NHKは、社長に取材交渉を重ねたが、結局取材は許可されなかった。
 この夜、会社と管理団体と支援者が交渉をした。
 ベトナム人に対しては、会社の経営者たちは絶対的な権力者のように振る舞うことが出来ても、日本人の支援団体の前では違法な搾取行為を行っていることは明白なので、それを指摘されたら何も言えない。この話し合いの結果、彼女たちは会社を離れてシェルターに保護されることになった。

 この後彼女たちは今治を離れて佐賀県のアパートに移っていた。
 保護された実習生たちは作業報告書の写しを持っていた。作業内容ごとに作業時間と終了時間を自ら記入し、会社に提出する書類。行政処分の証拠にもなった書類だ。
「この報告書はこっそり携帯で撮りました。社長に見つかると危ないのです。」
 報告書には月曜日から土曜日まで週6日ほぼ毎日、朝7時半から午後11時まで働いていたことが記録されていた。実習計画を1日5時間以上上回っていた。一方、会社が作った給与明細では土曜は休み、残業として認められていたのは月に44時間。1日あたり2時間だけだった。
「仕事は全力で頑張りました。搾りきったレモンのような状態になっていました。」
 技能実習制度では、実習生達が不当な扱いを受けないような仕組みがある。その役割を担うのが管理団体。実習生や企業への紹介窓口になる非営利の民間団体である。管理団体は企業と実習生の間に入り、企業に対して技能が適切に行われているかを指導したり、実習生の相談を受け付けたりする。今回のベトナム人技能実習生のケースについて、指導監督は適切に行われていたのか。
 上に書かれたことは建前であって、実態は、この管理団体というのが悪の根源で、まさに、外国人技能実習生たちを食い物にしている恥知らずの悪党どもの集まりなのだ。
 勿論、全ての管理団体が悪の根源では無いのかも知れないが、殆どが想像を絶する酷いものとしか言いようのない組織なのだ。

 長くなったので、続きはまた次回にしたい。







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