日米の紛争と米中の覇権争い




2020.09.22.

 アメリカからの締め付けによって、15日から中国のファーウェイへの部品供給が止まることになり、TikTokもアメリカでの使用と対話アプリ「ウィーチャット」の米国内での提供を20日に禁止すると発表した。こうしたことによって、ファーウェイのスマホの出荷は激減すると言われている。
 日本メーカーでも、東芝がファーウェイへのフラッシュメモリの出荷を止めたと発表した。
 このようなことは、大統領がトランプだからだと思っている人が少なくないようだが、大統領が誰であろうがこうしたことは起こりえるのだ。
 ある程度の年齢の人は知っているとは思うが、今、米中で起こっているようなことは日米でも起こったことがある。ただ、日本の場合は自民党がアメリカのポチであることを自認しているので、アメリカの圧力に対しては、安全保障の問題などアメリカに依存している部分が多々あるためとはいえ、アメリカ様ご無理ごもっともでございます。いかなることもおっしゃるとおりにいたします、と言った低姿勢に終始したことから、大きな問題にはならなかったが、中国はご存じのようにアメリカの意のままにはならないという高飛車な態度に出続けているために、事態は悪化の一途をたどっている。
 日米では自動車や半導体産業を巡って大きな軋轢にさらされたことなど、今の若者には想像も出来ないことだろうが、日本も高度経済成長と言う時期があった。繊維から始まって、自動車、最後には家電と半導体産業による激しい日米の争いが起こったのだ。
 半導体産業に関する一連の騒動の中で、アメリカの関連団体が大統領と議会に答申した文書があるが、今の日本の半導体産業しか知らない者には理解の限度を超えてしまっているかも知れない。でも、間違いなく現実にあったことなのだ。
 以下は、その文書の一部を抜粋したものだ。全部を書くと膨大な量になるので、1部だけにした。

危機に立つ戦略産業−−半導体に関する国家諮問委員会から大統領ならびに議会への報告
 かつて隆盛を誇ったアメリカの半導体産業が衰退している原因は数多い。最大の原因は、外国のメーカーが資金環境に恵まれていることである。
 アメリカの半導体産業は、この10年で世界市場における支配的シェアを失い、リーダーシップは大部分日本へ移った。この10年でアメリカの半導体産業では収入が3倍になったのに対し、日本のメーカー全体の収入は8倍になった。半導体産業は他の産業に比べて、莫大な研究開発費が必要である。所が、アメリカのチップ産業は、研究開発費で日本の企業に遙かに及ばず、差は広がる一方である。
 初めてICが売り出された1970年、日本のマーケットはゼロだった。それが1988年には、世界のDRAMの80%を日本のメーカーが占めている。
 アメリカの半導体産業は技術が衰退し、マーケットシェアを失い、収益が減少し、研究開発費や資本投下は減り、その結果マーケットシェアを失うという悪循環に陥った。アメリカは今やいくつかの分野で優位を保っているに過ぎず、これから優位に立とうとしている分野は皆無である。
 現在、超微細加工技術の85%が極東にある。そして日本の主要なチップメーカーは、彼らが管理できる日本の材料・装置メーカーと組みたがり、我が国の半導体製造装置メーカーは深刻な打撃を受けている。刻一刻と外国の半導体製造装置メーカーが技術力を蓄え、市場を席巻しているのに、我がアメリカはシリコンなど数々の半導体材料、フォトマスクなどリソグラフィに関する装置やテスト装置など大半の分野で世界市場から撤退を余儀なくされている。
 我が国の半導体メーカーは既に主要な材料を外国に頼っている。顧客である半導体メーカーが衰退している以上、そこに材料や製造装置を供給するメーカーも衰退するのは当然である。業界のある調査によると、アメリカ産業が購入する次世代の製造装置の70%が日本製になるという。我々はもはや我がアメリカの半導体産業は勿論、材料・製造装置産業が衰退し続けるのを容認できない。我がアメリカには、完全自前の半導体産業が必要である。自前の半導体産業が保証してくれるようなレベルの軍事的、技術的、経済的恩恵を他国の企業に依存できる見通しは無いからである。
 エレクトロニクス製品や半導体製品の品質がいかに大切であり、そのことに対する消費者の要求がいかに切実なものであるかと言うことに、日本人は早くから気がついていた。さらに、日本人は技術的な諸問題を乗り越えるために企業間が共同して取り組むという方法を効果的に使ってきた。
 アメリカチップメーカーにとって根本的に問題なのは、顧客が極東に移ってしまったことである。1984年には我が国と欧州で製造されたエレクトロニクス製品は、全半導体の63%使われていた。それが1989年には47%と減り、やがて半導体の最大の消費者は日本になった。特に深刻なのは、家電製品の生産が極東へ移動したことである。

 まだまだ続くが、長くなるのでこの辺で止めておくことにする。
 ここには日本とか極東と言った言い方で日本の半導体産業の繁栄ぶりを描いているが、こうしたことは僅か30年ほど前のことでしか無いのだ。僅か30年で、半導体産業の景色は一変してしまった。
 この文章の中にある日本や極東という言葉を中国と入れ替えたら、まさに現代の半導体産業の様相を表していることになっているわけで、上記の文章ではアメリカの半導体産業のシェアが短期間に激減しているとは書いてあるが、その要因は日本がアメリカの技術を盗んだからだとは一言も書かれていない。
 半導体の勃興記から日本はアメリカの特許の許諾を得て、半導体製造に関わりよりよい物を開発し続けてきた。それこそ何も無い中で様々な努力が続けられた結果アメリカを追い抜くことが出来たのであって、アメリカの半導体産業から技術を盗み出したわけでもなんでもない。勿論、当時はインターネットが殆ど普及していなかったので、サイバー攻撃などと言ったことは存在していなかったことから、ネット上で密かに盗みたくても出来なかったし、日本の技術者は他国から技術を盗んでなどという発想はそもそもなかったからだ。
 今でも日本はサイバー攻撃によって技術や情報を盗まれる存在であって、日本が国を挙げてアメリカなどの先進国から技術や情報を盗むなどと言ったことは聞いたこともないし、まず、あり得ないだろう。
 しかし、現在の上記のようなアメリカの報告書の中で中国を表す文章には、アメリカや日本などからの技術を中国が盗むという言葉が至る所に散りばめられているに違いない。
 こうした観点からもかつての日本に対する脅威よりも現代の中国による脅威の方がたちが悪いというか、深刻さがより際立っていると言えるだろう。
 上の文書が政府に上程されると、直ちにアメリカ政府は日本政府に対して強力な圧力をかけてきた。この理不尽としか言いようのない要求を日本政府は全て飲んだことで一気に事態は変わってしまい、日本の技術を様々な方法で取り入れた韓国と中国が、大きく半導体産業のシェアを伸ばすことになったのだ。
 アメリカという國は、自国を他国が越えることを許さない。もし、他国がアメリカの技術を追い越すと言うことが起きれば、誰が大統領であろうと、アメリカを追い抜いた國を政府が一丸となって蹴落とそうとする。
 アメリカ人という國は、自分たちが発明した物を高額な特許料を取ってとはいえ、鷹揚に他国に分け与えてくれるというとても良い点があるが、自分たちを乗り越えて行くことは許さないのだ。
 こうしたアメリカ人特有の傲慢さを中国共産党もわかっているはずだが、大国意識が災いしてアメリカの圧力を跳ね返そうとしてきた。これがどういう結果を生むかは誰にもわからないが、アメリカという傲慢な國は決して中国のアメリカを超えて圧倒的な優位な位置につこうという野望を容認することは無いだろう。









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