高齢者の犯罪




2020.09.14.


 アメリカのノースカロライナ州で、息子をピストルで撃った84歳の男性が、11歳の孫に散弾銃で撃たれて死亡するという事件があった。
 警察は、少年が父親を守るために祖父を撃ったとみて調べている。
 日本でも、福井市の自宅で高校2年の孫娘を殺害したとして、冨沢進容疑者(86)が逮捕されたが、福井県警の調べに「孫にきつく当たられて腹が立った」などと話している。
 アメリカでの事件では、何が原因かは判然としないが、日本の場合は酔った勢いで寝ている孫娘を襲ったようだ。
 襲う原因となったのは、恐らく孫娘が夜遊びなどをしてろくに勉強もしていないのをたしなめると言ったようなことをしたのだろう。 でも、注意された方は馬鹿な女で年配者という自覚すらも無いからなのだろうが、ひどく老人を罵倒すると言うことをした。だが、その時には老人も自制して何もしなかったのだが、おもしろくないので酒で憂さ晴らしをしようとした。所が、飲んで酔っ払ってきたことで自制がとれてしまい、先ほど小娘に罵られたことが頭によみがえってくると、どうにも怒りが抑えきれなくなってしまい、怒りにまかせて刃物を持ちだして殺害に及んでしまったようだ。勿論、これは推量だが、当たらずとも遠からずだろう。これに近いようなことがなかったら、かわいい孫娘を手にかけるなどと言うことをするはずが無いからだ。
 まあ、怒りを抑えきれないような酷いことを言われたにしても、相手はまだ16歳の子供なのだし、86年も生きてくれば愚かな女というものは相手かまわずに毒々しいことを平然と言う生き物なのだと言うことくらいのことを知らないはずが無いだろう。勿論、賢くて思いやりのある優しい女は、年配の人を罵倒するなどと言うことは考えもしないだろうが。
 それにしても16歳と言えば人生でも最も活発な年代だ。それを16歳の俊敏な動きをすることができる女の子が必死で逃げ回るのを追いかけて、追い詰めてしまうという運動能力は、86歳という年齢を考えたら驚異的としか言いようが無い。
 人間は長生きとは言っても中々80代まで生きる人は少ない。生きたとしても殆どよぼよぼかそれに近い状態で、とてもではないが息子や孫を殺すなどと言うだけの体力を持った者は稀だろう。
 アメリカの例は銃での犯行なので、体力はあまり関係ないとは言え、それでも怒りにまかせて息子を殺そうと思うその気力には驚くしか無い。さらに、溺愛していたであろう孫に殺されるとは、シェークスピアも顔負けの悲劇だ。
 シェークスピアの悲劇は、いかに人間の欲望の深さによって人というものは残虐になり得るかと言うことを描いている。リア王は娘たちによって騙されて悲嘆のどん底に突き落とされるが、死の直前に3女によって救われるというもので、直接肉親である父親に対して手を下して殺し合うわけではないし、マクベスは、妻の悪しき欲望によって王という他人を殺すのだが、ハムレットは叔父が兄の王を殺害し、王の座についたと言うことから肉親を殺している。兄弟は他人の始まりというくらいで、子供の時にはどれほど仲が良くても成人すると他人に近づくので、親子や孫とは違うが、ハムレットの場合はその多くが誤って殺すと言うことが次々に起こり、最後には関係者の全てが死んでしまう。
 オセロは、悪人の謀略によってお人好しなオセロが妻を殺してしまうのだが、基本的に配偶者は他人なので、裏切られたと思えば簡単に殺すと言うことになってしまいがちだ。ロメオとジュリエットも大変な悲劇で、ジュリエットの兄が最初に決闘によって死に、最後には主要人物は皆死んでしまう。しかし、どれもが他人か他人に近い人々によって罠にはめられたり謀略によって殺されたりして、死ぬ羽目になるわけで、親子や孫といった最も近い近親者どうしが直接殺し合うなどと言うことは、さすがのシェークスピアも書けなかったのに、現実の世界では頻繁に起こりえるのだ。
 いつの時代でも人間の欲望や願望というものには際限が無く、特に子供や孫と言った最も近い関係にある者に押しつけたり、押しつけられたりすることが悲劇を生むことにつながるのだろう。
 70歳を過ぎたら、昔は好々爺ということばがあったが、好々爺のまま人生を全うすることを心がけることが大切なのでは無いだろうか。
 超高齢化社会で、せっかく長生きをしても寝たきりとか車いす生活で介助を受けないと生活が出来ないとか、惚けてしまって自力では何も出来ずに、ただ生きているだけという人が少なくない中で、元気で80代の半ばまで長らえることが出来たというのに、自分が生み育てた家族同士で殺しあいをしなければならないなんて、これ以上の悲劇は無いだろう。
 最近では100歳まで生きる人が急増しているので、そういう長生きの素質を持った人というのは、80歳代という超高齢でも普通の人の60代くらいの体力を持っているのだろうが、人はみんな必ず老いるのだから、せっかく天から与えられた希有な生命力を肉親に限らず、多くの人が喜ぶようなことを行うことに活かすことができれば、長生きしたかいがあったというものでは無いだろうか。

 今は一人で生活をしている人が多い。一人で暮らしていくのは辛いものもあるが、一方で家族間の諍いと言ったことを経験しなくて済むと言うメリットもある。
 圧倒的多数の人は家族間の諍いなど殆ど経験することも無い人生を送れているのだろうが、少し前に、洋弓で弟と母親を殺し、叔母に大けがをさせたと言った悲惨な事件があったが、結局この男は家族の全てを自分で始末し、本人は刑務所で死刑の執行を待つだけというとんでもない悲劇を一人で演出してしまった。
 こうした家族間の諍いによって引き起こされる事件は頻繁に起きているが、その家族によって諍いの性質は違うだろうし、せっかく大変な時間と労力を費やして子供を育てても引きこもりになってしまい、親子でありながら全く顔を合わさなかったり、親に対して日常的に暴力を振るうという輩までいるという。こうしたひきこもりの事例は、日本だけでも100万件以上もあると言われている。
 こうした家族間の軋轢を抱えた人々の精神的な苦痛を考えたら、一人でいるつまらなさなんてたいしたことが無いとも思えるのだ。










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