ハイティンク90歳の演奏会




2020.09.11.


 ザルツブルク音楽祭は長年続けられてきたもので、モーツァルトの生誕の地と言うことからモーツァルトの記念碑的な音楽祭という位置づけで、毎年夏にオーストリアのザルツブルクで開催され続けてきた。
 こうした中で去年、90歳を迎えたことを契機に巨匠であるベルナルト・ハイティンクが引退したのだが、その引退間際の公演がザルツブルク音楽祭での演奏会と言うことから人々の強い関心を集めた。
 ハイティンクは、カラヤンやバーンスタインといった超スーパースターとほぼ同世代の指揮者で、彼らスーパースターの陰に隠れがちではあったが存在感を示し続けてきた。
 それにしても指揮者というのは死ぬまで演奏を続けるのが普通で、私が知る限りハイティンク以外で生きたまま引退をした指揮者というのはあまり知らない。唯一知っているのは、トスカニーニだが、勿論、トスカニーニが生きて指揮しているのを見たことは無い。遙かな昔のことなので、写真や動画では無く生きたトスカニーニの指揮姿を知っている人は稀だろう。
 指揮者は指揮台の上で大汗をかきながら立ったまま腕ふりの運動を長時間続けているからだろうが、総じて皆長生きだとされている。しかし、いくら長生きと言っても限度があるので、大概の人は80歳代でこの世を去ってしまっている。それがハイティンクの場合は90歳まで生きたと言うのだから、大変な長命だ。しかも、死んだわけでは無く、まだまだ90歳とは思えないほどの元気さだ。
 その90歳の大長老が、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を指揮し、さらに、重厚で長大なブルックナーの交響曲第7番を指揮したのだ。
 ピアノ協奏曲のピアノ奏者は、エマニュエル・アックスで、こちらもポリーニやアシュケナージといったスーパースターの影に隠れた存在で、余り有名では無いが、堅実な演奏を続けてきた。指揮者もソリストもスーパースターの影で存在を示す機会が多くなかった者同士ではあったが、とても息の合った演奏を繰り広げていた。
 それにしてもブルックナーの交響曲第7番。90歳にもなって、1時間を遙かに超えるという大曲を指揮することが出来るのであれば、まだまだ当分続けられそうな気もするが、まだ元気なうちに引退してスケジュールに制約されることの無い自由な時間を得たいと思ったのだろう。
 しかしながら、個人的には彼のブラームスのセレナード第1番を聴きたかった。
 遙かな昔にFMで放送されたライブの演奏会でのブラームスのセレナード第1番は明るく癖の無い演奏で、とても魅力的で忘れがたいものがあったからなのだが、いつかCDでの録音をしてくれることを期待して待ち続けたのに、適わないままとなってしまった。
 最後に、長い間の活躍をありがとうございました、と言いたい。








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