サヘル・ローズ




2020.08.23


 サヘル・ローズが自身の半生と、イスラム世界で苦難を強いられている人を紹介する旅という番組を見た。
 女優と言うことで紹介されていたが、個人的には映画やドラマを殆ど見ないので彼女のことはよく知らない。ただ、時々NHKの「世界は今」という番組に出てくると言うだけのことでしかなかった。
 NHKの番組の中では頻繁に親父ギャグを言って楽しげに笑っている姿しか見たことが無いので、陰気くさい顔で自分の顔を鏡に映して「好きでは無い」と言っている番組の出だしからして強い違和感を持った。
 テレビで見る彼女は、何の苦難も知らないかのようにしか見えないのだが、実はイランイラク戦争の際に戦争孤児になったのだという。
 どういう経緯かは詳細は語られなかったが、見知らぬ女に孤児院から引き取られて日本に来たと言うことのようだ。
 日本に連れてきた義母にとっても日本は生きにくい国の筈。そもそもイスラム教徒である義母にとっては、イスラムの教えに反することばかりを普通にやっている國である日本というのはとても嫌な國の筈だが、しかも移民の受け入れにはきわめて消極的な國である日本になぜあえて来ようと思ったのかは何も語られないままだった。

 8歳の時に日本に来たということではあったが、日本に住んでいる知人が日本が住みやすいと自慢したのだろうか。そこで知人の住む日本に来たのだが、実態は知人にとっても他人を世話するのは気苦労が多くストレスがたまると言うことがあったらしく、日本に呼び寄せてくれた知人とすぐに仲違いをしたらしい。結果として、日本に来て僅か3週間で義母と2人で公園で暮らすようになった。言葉も何も通じない状態でどうやって公園での寝泊まりから脱出できたのかは何も説明が無かったが、おそらく援助団体が住むところを斡旋してくれたのだろう。
 その後学校に行ったという話は出てこなかったが、日本では外国人であっても子供が学校に通うのは義務なので、当然学校には行ったことだろう。でも、当然のことながら言葉もろくに話せないので、たぶん学校で同級生から差別を受けてしまい、そのつらさから死のうと思ったという。でも、自分を救ってくれて育ててくれた義母をおいて死ぬことは出来なかったようだ。
 義母と2人だけの平穏な生活が続いていたのだが、その義母が最近乳がんになった。義母が死んだら、日本という異国の地でひとりぼっちになってしまう。義母の影響なのだろうが、彼女にとってもイスラムの国々に対する思いはことのほか強いらしく、本当は生まれた国であるイランに行きたかったのだろうが、イランには苦い思い出があるので、隣の國であるイラクのクルド人の支配地域にに行った。そこで自分の人生を、悲惨な境遇にいる人々に語ることで、共感を得たかったようだ。
 その後にバングラデシュのダッカに行った。
 ダッカにある日本人が運営している孤児院に行き、翌日には線路沿いにあるスラムに行って子供たちと話をした。
 スラムに住む子供たちを励ましに行ったのだろうが、逆に、子供たちから励まされて、涙するサヘル・ローズ。
 自分は本名すらも知らない不幸のどん底にいる人間と言う意識が殊の外強いらしく、同じイスラム教徒の同じような苦難の中にいる人に会って普段は決して言えないことを話す。そのことで彼らと精神的には同じ仲間なのだという共感を得ることで心を癒やすと言うことを目的とした旅のようだが、とても強い違和感を感じた。それは、彼女が日本では女優として活躍しているらしいと言うことなのだが、個人的には女優としての彼女の活躍を知らない。だが、NHKの番組に出ていると言うことはそれなりに活躍が出来ているのだろう。
 彼女は、自分は不幸を一身に集めたような存在だとでも思っているかのように見えるのだが、美人に生まれたことで日本で女優として生きて行くことが出来ている。女はブスに生まれるか美人に生まれるかでは天地の差がある。勿論、美人に生まれれば必ず女優になれるというものでも無い。世界中に女優以外にも芸術的な職業を選択している人が山ほどいるが、その殆どは鳴かず飛ばずで1度もテレビにも映画にも出演できないままある程度の年齢になり、やむを得ずに職業を変えるという人が殆どなのに、彼女はテレビに出ることが出来ている。このことだけでも大変な幸運の筈なのに、幸運を幸運と受け止めようとせずに過去をいつまでも引きずり、悲劇のヒロインを演じ続けている。
 サヘル・ローズは、孤児であった自分を救ってくれた義母に対する強い恩を感じているので、一生独身でいることを望んでいるようだが、義母は今回のガンでは死ななかったが必ずいつかは死ぬ。その時にはサヘル・ローズもある程度の年齢に達してしまっていることだろう。その時になって、結婚して子供をと思っても叶わぬ望みとなっている可能性が高い。
 義母が犠牲になって孤児である自分のために半生を捧げてくれたのに、自分だけ結婚して幸せになることは出来ないと言うことのようなのだが、それなら義母と一緒に住んでくれる男を捜せば良い。今なら彼女の要望を喜んで聞き入れてくれる男はいくらでもいるだろうが、10年たち20年も経ってしまったら彼女の要望を受け入れてくれる男の存在の可能性は殆ど無くなる。
 余計なお世話かも知れないが、悲劇のヒロインとなって自虐的な考えに凝り固まっていないで、早く好きな人を見つけて幸せになってもらいたいものだ。
 あえて言うまでもないことだが、日本に生まれていても馬鹿な親の元で生まれ、殆どこれといった楽しみも知らないままの子供時代を送り、大人になっても孤独を強いられ続け、一人寂しく狭いアパートの一室で誰にも看取られることも無いままにこの世を去って行くという人はいくらでもいる。私自身がそうした多くの苦しい人生を歩んできた者の中の一人なので、あえて言いたいのだが、こうした悲惨な境遇にいる人と比べたら、サヘル・ローズは心を許せる義母がいて、テレビに出る仕事をしたいと思っても殆どの人が願いを叶えられないままなのに、彼女は美人に生まれたことでいとも簡単にテレビに出演することができ、立派な住まいをも手に入れることが出来ている。それなのに、過去の不幸を背負い続けて同じイスラム教徒の辛い境遇にいる人と悲しみを共有することで、精神的な救いを得ようとしているようにみえるが、そもそもそんなことをする必要があるのか、と言うことがある。過去には辛く苦しいことがあったとしても、今ではその過去を乗り越えて人もうらやむような生活が出来ているでは無いか。なぜ、好きこのんで辛く悲しい境遇にいる人々と古傷をなめ合うと言うようなことをしなければならないのだろうか?

 このコメントについては、番組にはっきりと明示されていない部分については想像するしかないので、たぶん間違っている部分が少なくないだろうが、当たらずとも遠からずなのでは無いかと思う。
 この1文をサヘル・ローズ自身が読むことは万が一にも無いだろうが、できれば読んでもらいたい。
 そして過去の辛い体験に固執するのを止めて、今現在の自分の姿を見つめて出来るだけ楽しく生きてもらいたい。
  過去を嘆き苦しみながらでも時間は刻一刻と過ぎていき、やがては生を終える時が来る。
 どうせ同じ生きるのなら、運命を呪い、嘆き悲しみながら生き続けるより、楽しく愉快に生きた方が良いに決まっている。
 彼女は、世界中にいる多くの不幸を背負って生きている者に比べたら、どれほど恵まれているか知れない。
 世の中には孤独の中ですることも無く惨めな生き様を強いられている者が少なく無いのに、彼女は多くの人に支えられていること自体がどれほど幸運なことか。
 テレビ番組に登場して一緒に涙してくれていたかわいそうな人々を見て、自分は遙かにましだと優越感にに浸るのも良いかも知れないが、そうしたことを続けていても一時的な自己満足でしか無い。それよりも自分の幸運を神に感謝しつつ前に進むことの方が遙かに建設的なはず。
 もしかしたら、テレビ番組は番組としての演技をしていただけなのかも知れないが、あくまであれは演技では無いと仮定して書いた。
 いずれにしても、どれほど過去を嘆いてみたところで、過ぎ去った昔を変えることは出来ない。過去を変えることは出来ないが、未来はいくらでも変えることができる。ぜひ、輝かしい未来に向けて、気持ちを切り替えて快活で楽しい人生を送ってもらいたいものだ。










ご意見等がありましたら下記にどうぞ



 話がおもしろい、または、ためになったと思われた方は下の画像をクリックしてください。
 勿論、購入するかどうかはあなたの判断です。