母と子




2020.08.16


 ロマン・ロランの「母と子」という本の中で、主人公の妹であるシルヴィは、甥のマルクの「人生とは何のためにあるのか」という哲学的な問いに、とても気の利いたことを言っていた。
「何にもならないのさ。生きるためよ。
人生は何かの役に立つの?おなかから出て生まれる。何のためだかわからないわ。
おなかを膨らませ、食って、恋して、騒ぎ回るのが、何のためだかわからないわ。
死ぬ。なんだか知らないところに入るのが、何のためだか知らないわ。
…なんのためかわかっていることはたったひとつしかない。それは人は退屈することだわ!この世で人がすることはみんな、退屈なことを考えないというただひとつの目的のためだわ…。」
 フランス人は退屈、アンニュイという言葉がことのほか好きで、ボヴァリー夫人では頻繁にアンニュイという言葉が出てくるが、ここでもアンニュイという言葉が効果的に使われている。
 上記の話は、これだけ見てもふーんで終わりだろう。
 母と子というものすごく月並みな題名だが、ものすごく理想主義に凝り固まった女とその息子の話に、正反対の享楽的な生き方に終始する母親の妹がからんでくる。
 物語の時代背景には第1次世界大戦がある。
 やがてのことに戦争は終わるが、理想主義のために生きていくのが大変な母と子に対して、酒と女を用いた商売をすることでお金がたっぷりとあるシルヴィ。
 こうした状況の中で、マルクは叔母に向かって人生とは、と言う問いかけをしたのだ。
 シルヴィは、可愛い甥の問いかけで無かったら返事もしなかったことだろう。
 彼女は不快さを隠すことも無く、投げやりな口調で答えたのだ。

 今の日本では本を読む若者が激減していると言うことだが、作家が大変な時間を費やして物語を紡いでいったものなので、長編ほど読み応えがあるし、おもしろい。
 せっかくこの世に生まれてきたのに、こうしたおもしろさを知らないままこの世を去って行くのはあまりにももったいなさ過ぎる。人生は短い。青年でまだまだ人生は長いと思っていると、あっという間に中高年の仲間入りだ。
 いきなり長編を読むのは大変かも知れないので、短編を買って少しずつ長い文章になれていけば、全く違った人生になるかも知れない。



 話がおもしろい、または、ためになったと思われた方は下の画像をクリックしてください。
 勿論、購入するかどうかはあなたの判断です。







ご意見等がありましたら下記にどうぞ